第2章 照葉樹林文化
粒の脱落性
野生種が、種子を自然散布するのに適応した性質であるが、栽培種では刈り取りの際に脱落しては不便である。
そこで栽培種では、鎌で刈り取る人間の収穫法に便利な、脱落性を消失させた品種に改良された。
しかし、脱落性を保持している時代にはシード・ビーターという竹篭で掬い採る方法が採られた。
あるいは、脱落性が現れる前の未熟な時期に刈り取るということをした。この未熟刈りは穂刈りとなる。
これを、モミのまま蒸して臼で搗くと、粒は扁平になり、モミガラが落ち、アルファ米となり、
貯蔵性能に優れ、水を加えただけで食べられる。
ヒエの精白法も白蒸し法、黒蒸し法という蒸してから精白する方法が用いられる。
シコクビエ(eleusine coracana)
食べて非常にまずく、収量もあまりよくない。
エチオピアのタンガニーカ付近に野生しているエリューシネ・アフリカーナは、栽培しているシコクビエと自然交雑をするので、
これが原種として一番確からしい。シコクビエもイモチ病にかかるので、イモチ病はもともとはシコクビエの病気と考えられる。
シコクビエの移植栽培からイネの田植えに「稲作以前」
シコクビエは畑地に直接バラ蒔きされる。このときシコクビエの種子は小さいのでかなりの厚蒔きになってしまう。
そこで発芽後に間引きが行われて3分の2ほどは取り除かれる。
間引きした一部をもう一度畑地の空いたところへ植え替えることがある。
禾(か)本科植物
サル類は禾本科の穂を食べない。草食獣のウマやウシもワラや芽は食べるが穂は好かない。
イノシシやクマは食べるかもしれないが、穀粒を食用にしたのはノネズミ、小鳥、昆虫類だけで、
サバンナの天然の雑穀はヒトにとって残された資源であった。
野生種には多年生が多く、一年生だけを選び出して栽培した。
サハラの南のサバンナ地域は一年生禾本の多い地域。
地中海に冬作のコムギ、オオムギ、サハラに夏作の雑穀が発生した。
モンスーン気候地帯では一年生禾本は多年にわたって安定した群落をつくらない。
たとえば洪水の跡の露出地には翌年一年生禾本の大群落が自然にできる。
ところがたいていその翌年には、ずっと少なくなり多年生の草が生えてくる。
数年後にはすっかり消えてしまい、多年生の禾本からなるサバンナに変わってしまう。
ところがいったん草原を人為的に露出させるなど、すなわち耕したりすると、
その後まもなく一年生禾本はよく反応して、たちまち収穫が期待できる。
逆に多年生の植物の群落は、その生育を人為で簡単に改良することができない。
つまり農業は一年生禾本の群落を、人為的につくることからはじまった。
ところがサバンナ植生では、冬の乾燥期に野火で草を焼くだけではかえって、多年生禾本の純粋群落になってしまい、
一年生の植物は減る効果しかない。
ニジェール川(4,180km、209,200平方km)中流地帯の原始的農耕の中には、多年生禾本の草原の中へ、
雨季の前に枯れている草の葉の間を通して、シコクビエの種子をいきなりバラ播きする方法がある。
やがて発芽してくると、人がその中に座り込んで雑草を一本ずつ手で掘り取る。
雑穀農業はこのように始まったと考えられる。土を耕すことはなく、播種と除草だけがある農法である。
地中海東方地域すなわちチグリス・ユーフラテス地域とその後背地で11000年前に始まる。
アワ属(setaria spp.)
アワ(setaria italica)
キビ属(panicum spp.)
キビ(panicum miliaceum)
ヒエ類(echinochloa spp.)
ヒエ
echinochloa colonumから生み出された、インド原産のインドビエ(e.frumentacea)と、
極東地域でイヌビエ(e.crusgalli)をもとに栽培化されたヒエ(e.utilis)の2種類がある。
雑穀農耕がインドから中国西部の山岳地帯を通過するときに野生のヒエを栽培化した。
イネ以外の雑穀がもともと乾燥した気候に適しているのに対し、ヒエは雨の多い湿潤気候に適応している。
畑作型のほかに水田型がある。
ミレットの伝播
インド中西部→ベンガル・アッサム→ブラマプトラ川の河谷沿い
アワ(野生種エノコログサ)、キビというインドを起源とするもの
ハトムギ少し遅れてシコクビエ、モロコシ
イネ
アフリカイネのグラベリマ(glaberrima)
野生種ブレビリギュラタ(breviligulata)ウキ稲型の生活型脱落性あり
バルティ(barthii) 多年生植物でウキ稲型
アジアイネのサチバ野生種多年生のペレニス
ブラマプトラ川(布拉馬普特拉河)は
上流がチベットのヤルツァンポ川(雅魯蔵布江)で、
長さ2900km、流域面積はガンジス川2510kmと合わせて173万平方km。
小さな穀粒を集めるのに、群落を作っている所に目をつけた。
サバンナが砂漠オアシス地帯に接続しようとする所は、ほうっておけばいつまでも裸地で多年生草本が容易に侵入してこない。
そういった限界的・不安定な所に適応した植物の種類は少ないから、一種類の植物が一面に純群落を形成することも珍しくない。
それが一年生の禾本科。
こういった条件は砂漠オアシス地帯の中にもできる。サバンナでは夏に成長して秋に実り、砂漠オアシスでは冬に成長して春に実る。
アフリカで栽培化トウジンビエ、ソルガム
インドで栽培化アワ、キビ
分布図p344
もっとも原初的な生活
熱帯のサバンナ乾季にも枯れない川
常緑の川辺林
雑食性
雨季には川辺林の中にイチジクなどの漿果、柔らかい木の葉
ショウガの茎
乾季バオバブやヤシの実
貝類、カタツムリ、サワガニ、サソリ、シロアリ
アリ、セミ、カブトムシ
ミツバチや他のハナバチが木のうろにためた蜜とその幼虫やさなぎ
鳥の巣のなかの卵やひな
カエル、トカゲ、カメ、ヘビ
小鳥、ネズミ、リス、ウサギ、ヤマアラシ
イワダヌキ
要するにこれはチンパンジーの生活に肉食のウエイトを高くしたものではないか?