第5章 資料
新しい血液型Gm型の特徴
1.Gm型は分子時計
戦後生まれの若者や米国移民の2世、3世の身体的特徴が戦前の日本人に比べ、
わずか50〜100年の間に大きく変化しているように、
形態学的なレベルの変化は一定の速度で進むものではなく、
系統や時間や環境によって大きく左右される
これに対し「分子時計」といわれるDNAやタンパク質などの情報高分子に生ずる変化はほぼ一定の速度で進む
Gm型は抗体をつくりだすDNAの変異をアミノ酸の変異として血清学的に捉えたものである
Gm型は生物の系統発生や進化の解明に信頼度の高いものとして利用される
2.Gm型は人種を識別できる
モンゴロイド(蒙古系)、コーカソイド(白人系)、ニグロイド(黒人系)という人種の違いが識別できるだけでなく、
違った人種との混血の有無、混血の割合、民族の特徴や移動の跡づけなどができる
現在は「人種は定義できない」ということになっている
抗体=免疫グロブリン=血清タンパク
5つのファミリー(クラス)
IgM、IgG、IgA、IgD、IgEがある
量的に最も多いIgG(ガンマー・グロブリン)のもつ血液型がGm型(ガンマー・マーカー)
その後IgA、IgE(花粉症に関連)にもみつかり、Am型、Em型という
Gm型は血球凝集阻止試験により判定
O型血球に
不完全Rh抗体をくっつける(血球の感作)
生理的食塩水中に浮遊させた感作血球に
抗Gm抗体を加え凝集させる
この血球の凝集を阻止する能力を
もつヒトの血清をGm(+)型
もっていない場合がGm(-)型
こうしてヒトの血清について色々の種類の、型(アロタイプ)遺伝標識(マーカー)を分類することができる
現在18の型があり、この型の違いは15万以下の分子量のIgGの定常部(後述)の450個の配列の中の特定の位置の、
1個か2個のアミノ酸が置き換わることで生じる
この置き換えはポイントミューテーション(点突然変異)の結果である
日本人におけるGm表現型と遺伝子型
表現型 遺伝子型
a x g f b1 b3 s t
+ - + - - - - - ag/agホモ
+ - + - - + + + ag/ab3st
+ + + - - - - - axg/axg又はag/axg
+ - + + + + - - ag/afb1b3
+ + + - - + + + axg/ab3st
+ - - + + + + + afb1b3/ab3stヘテロ
+ - - - - + + + ab3st/ab3st
+ + + + + + - - axg/afb1b3
+ - - + + + - - afb1b3/afb1b3
ag/ag ag遺伝子のホモ接合体
(同じ遺伝子が対立遺伝子座にある)
afb1b3/ab3st ヘテロ接合体
(違う遺伝子が対立遺伝子座にある)
表現型には一定の決まった組み合わせがあり
それに従って遺伝子型(ハプロタイプ)ができ
日本人では4個の表現型を使って9種類の遺伝子型が存在する
父親からの遺伝子と母親からの遺伝子のペアを対立遺伝子といい
ヘテロ接合性とは対立遺伝子が異なることをいう
蒙古 青ag(北方系マーカー)
緑axg
赤afb1b3(南方系マーカー)
黄ab3st(蒙古系マーカー)
白人 ag、axg、fb1b3
黒人 ab1b3、ab1c、ab3s
IgGの基本構造模型とGm、Kmのアロタイプ
18のアロタイプが4つのサブクラスのどのタンパクに担われているか
a x f はIgG1
b1 b3 s t g はIgG3
IgGサブクラスのch2とch3部分の特異的なアミノ酸
位置268 のグルタミン はIgG4
位置274 のリジン はIgG1
位置276 のリジン はIgG3
位置309 のバリン はIgG2
位置330,331 のセリン はIgG4
位置355 のグルタミン はIgG4
位置409 のアルギニン はIgG4
位置422 のイソロイシン はIgG3
位置445 のロイシン はIgG4
モンゴロイド
Gm(s) 位置435 ヒスチジン
Gm(t) 位置379 メチオニン
遺伝子頻度=Gm各遺伝子の割合
メンデル集団=メンデルの法則に従う個体からなる集団
遺伝子プール=メンデル集団各個体のもつ配偶子の集合
ハーディ・ワインバーグの法則(平衡)
大きな集団で任意交配
メンデル集団の遺伝子頻度は世代を重ねても
一定の比が保たれる
Aとaという対立遺伝子があり
Aの遺伝子頻度をp
aの遺伝子頻度をqとすると
AA:Aa:aaの相対頻度は(p+q)の2乗
を展開した各項p2:2pq:q2に等しい
瓶の首効果
飢餓、戦、悪疫の流行などで集団が急に小さくなる
創始者効果
劣性遺伝子が長い年月の間にその子孫に拡散する
いずれも集団の遺伝的変異性を低下させる
逆に
遠縁効果
血縁の遠いものが結婚して遺伝的変異性が増大する
族内結婚
ホモ接合のおこるチャンスが高くなる
遺伝子の流れ
一つの遺伝子がある人種・民族から他に浸潤していく
遺伝子頻度はその流れに従って次第に小さくなる
免疫グロブリンの発生5億年前の古生代
l鎖とh鎖は初めは100個くらいのアミノ酸
2億年前にIgMから分化したIgGのh鎖定常部の変異速度
100残基アミノ酸で35回観測
実際には48回に相当
哺乳類の24回の突然変異に相当
哺乳類の分化が7500万年前なら
1億年で32pam
と計算され非常にゆるやかで一定性を示す
2億年前IgMのミュー鎖からIgGガンマ鎖が分化
カッパ型とラムダ型の分化はその後の両生類から以降
最も原始的な脊椎動物ヤツメウナギ
ヒトのミュー鎖(IgM)と類似
ヒトのIgGと相似で最も低次な動物は両生類
500〜400万年前 チンパンジーから分化
100万年前 アラビア半島を越えて脱アフリカを果たす
12万年前 黒人から後の白人蒙古系が分離
6万年前 白人から蒙古系が分離
1万数千年以上前 蒙古系渡来(朝鮮と同時期かそれ以前)
これに先立つこと数千年程度前 アイヌ系渡来(宮古島も同じ民族)
南方 海岸沿いにインド、東南アジア、中国南部、そしてその周辺部
北方 中央アジア、天山・アルタイ山脈の北側沿いに東進、バイカル
根井正利
遺伝子座の成績を用いて遺伝的距離を計算
12万年前 6万年前
黒人
白人、蒙古分離---白人
蒙古分離
根井正利集団遺伝学的理論
t=3.75×106×d
t:二集団の分岐年代
d:根井の遺伝距離
皮膚の色の違い
ビタミンD合成の割合を生理的な範囲に維持するため
Gm(t)の生じた時期
1万数千年前に点突然変異で
先史時代の分散中心
北方型 バイカル湖畔
南方型 雲南・広西
アフリカ黒人ヘモグロビンsという異常遺伝子
正常のものより熱帯マラリアの抵抗性高い
1万年前の日本の人口65万人
朝鮮半島の通過は朝鮮民族と同時期かそれ以前
アイヌ民族と日本民族の頻度の違いは数千年程度
渡来時期1万数千年以上前
霊長類 a z b0 b1 b3 b4 などがある
カニクイザル
ニホンザル z b0 多型性乏しい
エチオピアの
マントヒヒ
ケニアの
キイロヒヒ a b0 b1 b3
チンパンジ-
ゴリラ a z b0 b1 b3 s c
オランウ-タン
ギボン z b0 b1 b3
b0 が共通、zも多い
x f t はない(ヒトにしかない)
IgGサブクラスのアロタイプ z a
IgGサブクラスのアロタイプ b0 b1 b3
はアボリジニ、ネグリ-ト、カダザンなどを始めとして全ての人種に
f x は白人と蒙古に共通
t は蒙古だけ 1万数千年前
青の ag 北方
赤の afb1b3 南方 マラリアの防御
黄色の ab3st 北方 新大陸で消失 新モンゴロイド
6500年前アラスカ ナ・デネ語系
4000年前イヌイット
緑の axg 古モンゴロイド 4〜2万年前 南北インディアン
日本人
バイカル湖→アム-ル河
面積3.2万平方km、最深部1620m
アイヌ、宮古島
北方の青agが高い頻度
北方の特徴強い
古い集団
朝鮮 赤の南方の影響
形質人類学(自然人類学)ではアイヌ、本土、沖縄
北と南2つのコ-ス
北と南2つのコ-ス地図
漢
西安、武漢と抗州を結ぶ線
北 青黄
南 赤
オロチョン、エベンキ、チベット 強い北方
タイヤル、ブヌン、パイワン 南方
チワン
タイ、プイ、トンと同じ
貴州メオ
│
│異質性
│
タイメオ───台湾
同質性
メオ、ヤオ 北から南へ移動