第5章 資料
 第3節 人類の進化
  第6項 多地域進化説

 多地域進化説は単一種説が否定された事により、それを修正する形で唱えられたものなので単一種説から紹介する。 単一種説は1964年、アメリカのローリング・ブレイスにより打ち建てられたもので、その後80年代の初めまで、 日本では教科書に載せられていた事から広く知られていた説で、現在でもその痕跡を残す記述が見られる。

お馴染みのこの説は、
400万〜150万年前 猿人(アウストラロピテクス)

150万〜20万年前 原人(ホモエレクタス・直立する人)

20万〜3万年前 旧人(ネアンデールタール人)

3万年前〜現在 新人(クロマニヨン人又はホモサピエンス(リンネの分類で知恵ある人の意))
というように順次、進化して来たという説であるが、次の2点の誤りが明らかになった。

単一種説の破綻
1.1975年リチャード・リーキーらのケニア、クービ・フォラの発掘による、
  頑丈型猿人(ER406)とホモ・エレクトス(ER3733)の発見により、
  東アフリカにエレクトスがいたことと、ボイセイとの共存が明らかになったため。
2.1997年ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAから、55万年〜69万年前に現代人と分岐したことがわかり、
  祖先ではないことがはっきりし、「旧人」は廃語になったため。

多地域進化説
1981年ミルフォード・ウォルポフら
ピテカントロプスと現代人との連続を根拠として
(1)ヨーロッパでの多地域進化説
1953年シャニダール洞窟(イラク)
花粉分析によるとネアンデルタール人が花を手向けていた(意図的かどうかについては不明)

3万5千年前ネアンデルタール人は絶滅するが、一時期クロマニヨン人と共存していた。
そこで、すでにネアンデルタール人は多様性に富み、ゆるやかに現生人へ移行していったのではないかと考えられる。

西アジアのネアンデルタール人の連続性
パレスチナのガリレー湖畔ガリレー人

カルメル山タブーン洞窟タブーン女性

カルメル山スフールの岩陰スフール人

クロマニヨン人

西ヨーロッパのネアンデルタール
西アジアのような変革はみられないが、西アジアの現代型ネアンデルタールにより滅ぼされたか、 混血により吸収され、姿を消したと考えられる。

これら多地域進化説の考えは事実関係が明確ではない、 DNAではネアンデルタールは現生人とつながらないし、混血の形跡もない。

2000年6月25日の放送大学固体地球第12回では講師の濱田隆士(NHKにも出演)が、ネアンデルタール=旧人であるとか、 出アフリカの図でパキスタン付近にもう一つの起源地があること、そこから西へイスラエル、東へ行ったのがアジアとするなど、 多地域進化説に基ずくと見られる説明がなされていた。

(2)アジアでの多地域進化説
1.ジャワでは原人から現生人までのつながりが認められ、それが多地域進化説の根拠となった。
トリニール西方サンギラン
前期洪積世(100〜50万年前)ジェティス層
ピテカントロプス旧型原人
ジャワ原人サンギランの頭骨(1969年)
50万年前脳容量1000cc程度メガントロプス(1941年)

中期洪積世(50万年前)トリニール層(1891年)
1931年ジャワのンガンドンで発見されたソロ人(新型原人、後期ホモエレクトス)
1996年ESR法で5万3千〜2万7千年前頃
10万年前脳容量1000cc越す

トリニールの南方ワジャク(1889年)
後期洪積世(15万年前)
ワジャク人
ワジャク
ボルネオのニアー洞穴
フィリピンのタボン洞穴

7000年前オーストラロイド
オーストラリアのアボリジニ

2.1960年代初頭インドでラマピテクスが出土し、骨のコラーゲンによる免疫反応でオランウータンに近いことがわかる。 ボルネオ、スマトラを居住域としアフリカにはいないこととも一致し、類人猿段階でも、アフリカのチンパンジーに対応することから、 この地域での独自進化の証拠として多地域進化説の根拠となった。
オランウータン

ラマピテクス

ピテカントロプス

アボリジニ
しかしその後の研究でラマピテクスはヒトにはつながらないことが明らかになる。

3.洪積世後期(最終氷期7万〜2万年前)の東南アジアの2大陸
スンダランド(マレー、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベス、フィリピン)
サフールランド(ニューギニア、オーストラリア)
ウォーレシア(両大陸間の多島海)
アフリカと似た環境だったため、ヒトが出現した可能性が高いというのも多地域進化説の理由になった。

中国の新人
北京周口店竜骨山頂(周口店の上洞)の洞人(1930年)
後期旧石器時代、初期のモンゴロイド
広西、雲南でも発掘柳江、資陽3〜4万年前

日本最古(1967年)沖縄港川人1万8千年前
港川の北の山下町3万2千年前未確認

ジャワ原人の絶滅が確定し、現生人とのつながりの根拠が消え、多地域進化説は否定された。