第1章 照葉樹林文化
 第1節 照葉樹林
 照葉樹林という用語は、20世紀初頭のドイツで使用されたlorbeerwalder(aはウムラウト)を、 東京大学中野治房教授が日本列島の常緑広葉樹林に適用したもので、英語には定まった用語はない。 植物分類ではブナ目(Fagales)のブナ科(Fagaceae)に属し、ブナ科は世界に約10属600種程が熱帯から温帯に分布し、
 ブナ属(Fagus)落葉高木
 コナラ属(Quercus)最も種が多く450種
 カシ属(Quercus)
  アカガシ亜属(cyclobalanopsis)
 ナンキョクブナ属
 クリ属(Castanea)
 マテバシイ属(Pasania)
 シイノキ属(Castanopsis)
 ツバキ属
 モチノキ属
などがある。

主な構成種は
 カシ類(イチイガシ、アラカシ、ツクバネガシ)を中心に、シイ(スダジイ、ツブラジイ)、 タブ、クス、ツバキ、モチノキ、イスノキなどの常緑広葉樹で、葉は比較的大きく厚く、表面につやがある。

 気候的には夏期の高温多雨地帯で、湿度が高く暑い夏と、極端に寒くならない冬が、この森を生んだ。 このため照葉樹林の中は一年中じめじめして暗い。照葉樹林内には鳥の種類が少なく、乾燥季には川水の音もしないので静かで、 木の茂った所では下草もほとんどない。木が落葉樹林に比べ高く、下まで枝のある落葉樹林と違い、樹冠が高い。 葉がかなり厚く、日光を完全に遮っている。真冬でも下ばえまで濃い緑色で、湿っていてコケが多い。 フジとかカズラとかのツルが非常に多く、熱帯の森林の特徴に似る。 木の幹や枝にくっついている着生殖物が多く、山ビルが多い。 このため陰鬱な感じが強く、北方の落葉樹林のような明るさがないので、 この森林を開拓したのは熱帯林で慣れていた南方系の人々ではないかと思われる。

 ヨ-ロッパでは南の乾燥地帯のサハラと北の氷河により断続したが、日本では南北の移動が自由だったため、 寒いと南に逃げ、暑いと北へ逃げるので継続し、南につながっている。

 日本の照葉樹林は
高木層が
 海岸地方ではスダジイ、タブノキ
 内陸部ではアカガシ、シラガシ、ウラジロガシで
低木層が
 ヤブツバキ、モチノキ、アオキ、ヒサカキ
草本層が
 ヤブコウジ、ベニシダ
である。

 常緑樹といっても2年〜10年ごとに、春新しい芽が出ると古い葉は落葉する。

 照葉樹林の分布はきわめて限られており、ヒマラヤの南麓、アッサム地方から雲南地方、東南アジア北部、華南・江南地方の山岳地帯、朝鮮半島南部をかすめて、西日本に分布するにすぎない。現在はレリクト(残存)と第二次林があるのみで、特に中国、朝鮮での消滅が著しい。 日本では伊勢神宮林が数少ない原生林として有名である。