第14項 死体化生型神話
記紀に登場するオオゲツヒメやウケモチノカミの死体からアワをはじめとする五穀が生まれた。
「古事記」
下界に下ったスサノオはオオゲツヒメに食べ物を所望した。
ところがヒメは鼻や口や尻から数多くの食物を出して饗応したので、
スサノオは怒ってヒメを殺してしまった。
するとこのオオゲツヒメの死体の頭に蚕、両目に稲、両耳に粟、鼻に小豆、陰部に麦、尻に大豆が生えた。
そこでカミムスビノカミがこれをとって種にした。
「日本書紀一書十一」
アマテラスの命でツクヨミが下界にいるウケモチノカミの様子を見に行った。
するとウケモチノカミは首を、国に向けては口から飯を出し、海に向けてはさまざまの海産物、
山に向けては狩りの獲物を出し、それらを並べて御馳走しようとした。
それをみてツクヨミはけがらわしいといって剣で殺してしまった。
そのウケモチノカミの死体の頭には牛馬、額に粟、眉の上に蚕、目の中に稗、腹の中に稲、陰部に麦と大豆小豆が生じた。
「日本書紀一書二」
イザナミが火神カグツチを生み、火傷で死ぬ。
その死に臨みイザナミは土の神ハニヤマヒメと水の神ミズハノヒメを生んだ。
カグツチはそのハニヤマヒメと夫婦になりワカムスビを生む。
この神の頭の上に蚕と桑が生え、臍の中に五穀が生じた。
多くの研究により、オオゲツヒメの頭に生じた蚕、 ウケモチカミの頭上や眉に生じた牛馬や蚕などは後に追加されたもので、もとは典型的な作物起源神話。 ワカムスビの場合も本来は死体化生型の説話であった。 そして火の神が土の神と交わって農耕神ワカムスビを生むという、焼畑を象徴する古い神話。
広東省北部のヤオ族の赤米の起源神話
アッサムのシモング族の雑穀生成神話
穀物生成神話は2種類
プロメテウス型(穀母神)=雑穀
ハイヌヴェレ型(死体化生型)=根栽
日本の場合ハイヌヴェレ型だが、雑穀に変化している。
言語構造と関連があるとする説がある。(諏訪哲郎)